「お酒は苦手だから、ビール業界に挑戦しづらい…」
「衰退傾向と聞いて心配…」
ビール業界に興味がある方の中で、衰退傾向と考えて挑戦しない就活生は多いです。
また、お酒が苦手という理由で、挑戦せずに諦めてしまう就活生もいます。
しかし、実際はクラフトビールの登場などで成長していたり、税制の改革で追い風が吹いている状態だったりします。
そこで今回は以下の内容を解説します。
- ビール業界の動向
- 大手4社の売上ランキング
- お酒は苦手でも就職できる?
お酒が苦手という方でも就職することは可能ですので、ビール業界に興味がある方はぜひご一読を!
ビール業界とは?仕組みを解説
ビール業界とは、ビールを製造・販売するビールメーカーのことです。
ビールメーカーは以下の2つに分けられます。
- 様々なジャンルを取り扱う「国内大手メーカー」
- 地域の特産品を使って製造する「地ビールメーカー」
どちらのビールメーカーも、スーパーやコンビニなどの小売店や居酒屋などに、ビールを販売して利益を出すビジネスモデルです。
また国内大手メーカーでは、「アサヒ」や「キリン」、「サントリー」、「サッポロ」の4社がシェアの約99%を占めており、就活生はこの4社を中心に受けることになります。
さらに、ビールを普段から愛飲していて「自分も新商品を企画したい」と考える就活生は多いため、ビール業界は毎年志望する人が多い人気の業界です。
ビール業界の仕事内容
ビール業界の仕事内容は以下の4つです。
- 研究・開発
- 製造
- 原料調達
- 営業
それぞれ解説します。
研究・開発
ビール業界の研究・開発職は、お客様のニーズを調査して、商品コンセプトや販売戦略の企画立案を行う仕事です。
例えば、「なぜ自社商品は売れたのか?」や「お客様は自社商品にどのようなイメージを持ったのか?」などを調査して、新商品やテレビCMを企画したり、既存商品の改善をしたりします。
また、製造工程の技術の開発や、原料となる大麦やホップなどの開発も担当することがあります。
このように、研究・開発職は商品開発に1から携われるため、「自社のビールは自分が作っているんだ」という自覚ができるでしょう。
こだわりのビールを開発したいという人は、ぜひ挑戦してみましょう。
製造
ビール業界の製造職は、研究・開発職によって開発された商品を、実際に大量製造する仕事です。
具体的には、麦芽やホップなどの原料の調整を行い、研究・開発職が開発したビールの味を100キロリットル単位で再現して、缶やびんなどの容器にパッケージします。
また、ビールの生産ラインの管理や新設備導入の企画立案、省エネルギー対策の企画なども担当することもあります。
ビールの製造に興味がある方は、ぜひ挑戦してみましょう。
原料調達
ビール業界の原料調達職は、世界各国に出向いてビールの原材料の買い付けを行う仕事です。
具体的には、海外のサプライヤーとの価格交渉や大麦の生育状況の確認、日本の工場に運ぶコンテナの確認など、非常に多岐にわたる仕事を行います。
また、原産国はカナダやオーストラリア、フランス、ドイツなど幅広く、英語やフランス語などの外国語が流暢な人が向いています。
さらに原材料は、作物の不足や為替の変動などの影響を受けやすいことに加えて、1回の調達で動かす金額が大きいため、自分の判断が会社の利益に直結すると実感できることがやりがいになるでしょう。
そのため、海外で働きたい方や規模の大きい仕事をしたいという方は、ぜひ挑戦してみましょう。
営業
ビール業界の営業職は、スーパーやコンビニなどの小売店や居酒屋に商品を販売したり、スーパーの売り場づくりの提案を行ったりする仕事です。
例えば、担当店舗へ訪問して、「商品を手に取りやすい場所はどこか?」や、「どうすれば女性のお客様が買いたいと思うか?」などを考えながら陳列したり、オリジナルのPOPを制作したりします。
さらに、店舗によってどの商品を売りたいかは異なるため、常にお客様の立場を意識して提案する必要があります。
また、良い提案をするためには商品知識が必要不可欠のため、ビールやお酒が大好きな方は楽しく働くことができるでしょう。
ビール業界に必要な資格
ビール業界で働く上で必須の資格はありません。しかし、保有していると選考で有利になる資格が存在するため、3つ紹介します。
資格名 | 資格内容 |
ビアテイスター | ビールの出来を鑑定できることを証明する資格 |
ビアジャッジ | ビールの審査をする知識と評価能力を証明する資格 |
日本ビール検定 | ビールの製法や原料などの基礎知識を証明する資格 |
中でも日本ビール検定は、3級・2級・1級に分かれており、1級の合格率は約10%と非常に狭き門となっています。
これらの資格を保有していると、ビール業界に熱意があることを面接官に伝えることができ他の就活生と差別化できるため、興味がある方はぜひ挑戦してみましょう。
ビール業界が向いている人の特徴
ビール業界が向いている人の特徴は、以下の3つです。
- お酒が好き
- 相手の立場で考えられる
- 積極的にチャレンジできる
まず、お酒が好きな人は、ビール業界に向いているでしょう。なぜなら、仕事のモチベーションが上がりやすく、消費者のニーズも理解できるため、新商品のアイデアなどが出しやすいからです。
また、ビール業界は自分が飲むのではなく、お客様においしく飲んでいただくことが仕事です。そのため、単に自分が好きなものではなく、お客様のニーズがあるものを考えられる人が向いているでしょう。
さらに、ビール離れや少子高齢化の影響で国内のビール市場は縮小傾向です。そのため、積極的に新商品開発にチャレンジして、斬新なアイデアを考えられる人が向いています。
ビール業界の魅力や就職するメリット
ビール業界の魅力や就職するメリットは以下の3つです。
- 新商品開発に挑戦できる
- やりがいを実感しやすい
- 平均年収が高い
近年のビール業界では、新ジャンルビールや生ジョッキ缶など、新たなコンセプトの商品が次々と登場しています。これらの商品開発に挑戦できるのは、ビール業界ならではの魅力と言えるでしょう。
また、自分が携わった商品をスーパーやコンビニで見つけたり、テレビCMを見たりした際には、「このビールは自分が作っているんだ」というやりがいを感じられます。
さらに、「アサヒ」や「キリン」、「サントリー」、「サッポロ」の大手4社の平均年収は約990万円で、食品業界の中では高めです。若いうちから稼ぎたいという人にとって、大きなメリットでしょう。
ビール業界の大変さや就職するデメリット
ビール業界の大変さや就職するデメリットは以下の3つです。
- 国内市場が縮小傾向
- 成長しにくい
- 体育会系の雰囲気がある
国内のビール市場は、ビール離れや少子高齢化の影響で縮小傾向にあります。そのため、福利厚生が縮小したり、出世しづらかったりする可能性があります。
さらに、国内のビール市場は「アサヒ」や「キリン」、「サントリー」、「サッポロ」の大手4社が独占している状態で、活性化しにくいです。そのため、仕事に自己成長を求めている人には、やりがいを感じにくいでしょう。
また、ビール業界は接待の場などが多いため、体育会系の学生を多く取っている傾向があります。体育会系の雰囲気が苦手な人にとってはデメリットでしょう。
デメリットはどの業界にも必ず存在します。他の業界と比較した上で許容できる内容であれば、ぜひビール業界に挑戦してみましょう。
ビール業界の大手企業売上ランキング
ビール業界の大手企業は、以下の4社です。
- アサヒ
- キリン
- サントリー
- サッポロ
また、2021年度の売上ランキングは以下の通りです。
順位 | 企業名 | 売上高 |
1位 | アサヒ | 約7251億円 |
2位 | キリン | 約6382億円 |
3位 | サントリー | 約6264億円 |
4位 | サッポロ | 約2254億円 |
ここからは、上記4社についてそれぞれ解説します。
参考:アサヒグループホールディングス|有価証券報告書
参考:キリンホールディングス|有価証券報告書
参考:サントリーホールディングス|有価証券報告書
参考:サッポロホールディングス|有価証券報告書
アサヒ
アサヒは「アサヒスーパードライ」や「クリアアサヒ」などを販売している、国内で売上高1位のビールメーカーです。
また、アサヒは時代の変化を先取りする新商品・新技術の開発を目指しています。
例えば、コロナ禍の家庭での飲用をより楽しくするために、開栓すると細かい泡が自然に発生し、飲食店のジョッキで飲む生ビールのような味わいが楽しめる「生ジョッキ缶」で注目を集めました。
さらに、アサヒの平均年収は約1,114万円で大手4社の中で一番高いため、20代からどんどん稼ぎたいという人はアサヒが向いているでしょう。
このように、国内トップのビールメーカーで、時代を先取りした商品開発に関わりながら、しっかりと稼ぎたい人はぜひアサヒに挑戦しましょう。
参考:アサヒグループホールディングス|有価証券報告書
参考:アサヒスーパードライ|生ジョッキ缶・生ジョッキ缶大生
キリン
キリンは「キリン一番搾り生ビール」や「本麒麟」、「キリンのどごし生」などを販売している、国内2番手のビールメーカーです。
そして、キリンが近年注力しているのが、クラフトビールです。
コロナ禍で高まった「自宅でちょっと良い時間を過ごしたい」というニーズから、2021年のクラフトビール市場は前年比約1.6倍に成長しましたが、2021年の市場増分の約8割をキリンの商品が占めました。
また、キリンは良いアイデアであれば、経歴や実績に関係なく受け入れる社風です。
例えば、「一番搾り」のリニューアルと「本麒麟」を大ヒットに導いた中途入社の社員が、史上最年少の執行役員に就任したことからも、風通しの良い社風が分かります。
このように、経歴や年齢に関係なくチャレンジし、成功を収めて大きな評価を得たいという方は、ぜひキリンに挑戦しましょう。
参考:KIRIN|人事総務部長からのメッセージ
参考:KIRIN|感動のビール体験を“白ビール”でご提案
サントリー
サントリーは「プレミアムモルツ」や「金麦」などを販売している、国内3番手のビールメーカーです。
特徴として、サントリーは大手ビールメーカーの中で唯一の非上場企業であり、自由な経営を実現できているため、独自の様々な施策を打ち出しています。
例えば、リモートワークが進む中で社員同士が雑談できる機会を増やすために、自販機に社員2人が社員証をタッチすると、1本ずつ飲み物が無料でもらえる法人向けサービス「社長のおごり自販機」をスタートしました。
また、2021年に「FRONTIER DOJO」という社内ベンチャー制度を立ち上げました。新規事業アイデアを募り、プレゼンを通過すれば、社内起業家としてビジネスプランを事業化できるという制度です。
このように、サントリーは自由度の高い経営により、独自の試みを多数行っています。興味がある方は、ぜひ挑戦してみましょう。
サッポロ
サッポロは「サッポロ生ビール黒ラベル」や「ヱビス」、「麦とホップ」などを販売している、国内4番手のビールメーカーです。
また、サッポロが注力しているのが海外展開で、現在は約45か国で展開しています。
例えばアメリカでは、「SAPPORO PREMIUM BEER」を中心に展開しており、アメリカでのアジアビールブランドとしてNo.1の売上高です。
そのため、サッポロは若手・中堅社員を対象にグローバル研修を実施しており、異文化対応力やグローバルな視野、語学力などの基礎スキルを学べる環境が整っています。
このように、サッポロはビールメーカーの中でも特に海外展開に力を入れているブランドのため、語学力を活かしたい人などはぜひ挑戦してみましょう。
参考:サッポロホールディングス株式会社|グローバル展開
参考:SAPPORO|働き方を知る
ビール業界の志望動機の書き方
ビール業界の志望動機を書く際には、以下の2点を明確にしましょう。
- なぜビール業界なのか?
- なぜその企業なのか?
まず初めにビール業界を志望する理由を伝えましょう。その際に、商品開発に関われるという特徴や、海外展開などのトレンドを押さえておけば、企業側はプラスに見てくれます。
次に、ビールメーカーの中でその企業を志望する理由を伝えましょう。国内のビール業界は4社で寡占している状態のため、志望する1社のみ調べるのではなく、それぞれを比較することでより特徴を使うことができます。
ビールの味わいやプロモーション方法、社風などを比べた上で、魅力的な志望動機を作成しましょう。
ビール業界の自己PRの書き方
ビール業界の自己PRを書く際には、以下の2点を抑えることが重要です。
- どのように企業に貢献できるか?
- 求められる能力を発揮した経験
自分がどのように企業に貢献できるかを書く際には、企業の求める人物像と自分が近いことをアピールしましょう。企業理念を確認し、どのような人材を求めているか必ず確認する必要があります。
また、ビール業界から求められる能力を発揮したエピソードを伝えましょう。職種ごとに求められる能力は以下の通りです。
職種 | 求められる能力 |
研究・開発 | 企画力 情報収集力 学習意欲 |
製造 | 技術力 学習意欲 情報収集力 |
原料調達 | コミュニケーション力 語学力 情報収集力 |
営業 | コミュニケーション力 学習意欲 ストレス耐性 |
さらに、求められる能力を発揮したエピソードに加えて、自身のビールやお酒に対する熱意を伝えることができれば、魅力的な自己PRができるでしょう。
ビール業界の年収や給料!ボーナスはいくら?
ビール業界の年収と給料を職種別に表にまとめましたので、参考にしてください。
職種名 | 年収 | 月収(ボーナス含む) |
研究・開発 | 500万円~900万円 | 42万円~75万円 |
製造 | 300万円~700万円 | 25万円~58万円 |
原料調達 | 500万円~900万円 | 42万円~75万円 |
営業 | 500万円~900万円 | 42万円~75万円 |
また、国内大手4社の「アサヒ」や「キリン」、「サントリー」、「サッポロ」の平均年収は約990万円と非常に高いです。内訳は以下の通りです。
企業名 | 年収 |
アサヒ | 約1,114万円 |
キリン | 約870万円 |
サントリー | 約1,140万円 |
サッポロ | 約835万円 |
このように、20代から稼ぎたいという方にもビール業界は向いているため、興味がある方はぜひ挑戦してみましょう。
参考:アサヒグループホールディングス|有価証券報告書
参考:キリンホールディングス|有価証券報告書
参考:サントリーホールディングス|有価証券報告書
参考:サッポロホールディングス|有価証券報告書
ビール業界の動向や今後の将来性は?
ビール業界の近年の動向は、以下の3つです。
- 国内ビール市場の縮小傾向
- 2026年の「酒税一本化」
- クラフトビールの拡大
それぞれ解説します。
国内ビール市場の縮小傾向
近年の国内ビール市場は、縮小傾向にあります。
国税庁の調べによると、2020年度のビール課税数量は前年比22.3%減の約183万キロリットルでした。その理由として、新型コロナウイルス感染拡大以外にも、大きく2つ考えられます。
- 少子高齢化
- 若者のビール離れ
まずは少子高齢化によって、飲酒量の多い現役世代が減少し、飲酒量の少ない高齢者が増加していることが原因です。
また、ハイボールやチューハイが若年層を中心に支持を集めており、ビールから消費がシフトしていることも原因でしょう。
その結果、各社は海外展開を進めたり、クラフトビールの開発を進めたりしています。
今後も国内市場の縮小は進むと考えられるため、ビール業界に興味がある人は動向に注目するようにしましょう。
参考:国税庁|酒税課税状況表
2026年の「酒税一本化」
これまでのビール業界では、ビールと発泡酒、第3のビールで酒税が異なっていましたが、2026年に350mlあたり54.25円に統一される予定です。
この改正によって、主力商品のビールの税額は引き下げられるため、ビール業界にとっては追い風の状況になっています。
さらに、ビールの競合であるワインは増税となるため、ビール業界が拡大する可能性もあります。
現在は酒税一本化の影響はほとんど見られませんが、今後数年で各社の売上や価格は変動するでしょう。ビール業界に興味がある方は酒税の動向に注目するようにしましょう。
クラフトビールの拡大
新型コロナウイルスの拡大以降、クラフトビール(手作りのビール)の需要が高まっています。
なぜなら、在宅時間が増えたことで、「自宅でちょっと贅沢な時間を過ごしたい」や、「家飲みを今よりも充実させたい」というニーズも増加したからです。
具体的には、2021年のクラフトビール市場は前年比約1.6倍に成長し、ビール市場における構成比は初めて1%を突破しました。
クラフトビールの値段はビールと比較すると若干割高ですが、「プチご褒美」として飲まれることも多く、今後も市場は成長することが予想されます。
ビール市場全体は縮小傾向にありますが、クラフトビールによって拡大傾向に変わる可能性もあるため、ビール業界に興味がある方は注目しましょう。
ビール業界のよくある質問
ビール業界に関して、就活生からよくある質問は以下の2つです。
- ビールが苦手な人は就職は難しい?
- 文系or理系でも活躍できる?
それぞれ解説します。
ビールが苦手な人は就職は難しい?
ビールが飲めない人でも、ビールメーカーに就職することは可能です。
なぜなら、ビール業界では自分がビールを飲むのではなく、お客様においしく飲んでいただくことが仕事のため、ビールが苦手かどうかは関係ないからです。
たしかに、ビールが好きな人は斬新なアイデアを出しやすいかもしれません。
しかしビールが苦手な人は、ビールが苦手なお客様の気持ちが痛いほどわかるため、社会のニーズに合った商品を企画できます。
また、面接などでもビールが飲めるかどうか聞かれることは少ないため、ビールが苦手な人でも興味がある方は、ぜひビール業界に挑戦しましょう。
文系or理系でも活躍できる?
ビール業界では、文系理系問わず活躍できます。
開発職や製造職は理系出身の人が求められますが、それ以外の職種では文系の人も挑戦可能です。
例えば、原料調達職は世界各国に出向いてビールの原材料の買い付けを行う仕事のため、学生時代に語学に注力していた方などは活躍できるでしょう。
そのため、文系理系問わず、ビール業界に興味がある人はぜひ挑戦してみましょう。
まとめ:ビール業界で楽しく働こう!
近年のビール業界では、若者のビール離れや人口減少によって国内市場は縮小していますが、将来性は非常にある業界と言えるでしょう。
なぜなら、新型コロナウイルスの拡大以降「家飲みを今よりも充実させたい」というニーズが増え、クラフトビールの需要も増えているからです。
また、健康志向の高まりに合わせた新商品開発や、国内だけでなく海外展開などを進めており、各ビールメーカーは順調に成長しています。
このように、まだまだ根強い人気のあるビール業界は、将来性があると言えます。お酒が好きな方やビール業界に興味がある方は、ぜひ挑戦してみましょう。