「人材業界の仕事内容のイメージが湧かない…」
「人を商材として扱うことに抵抗がある…」
人材業界は近年就活生に人気の業界ですが、仕事内容は詳しく知らない方が多いでしょう。
また人を商材として扱うことに抵抗を感じて、人材業界を諦めてしまう方もいます。
しかし、人材業界は求職者の人生を大きく左右する、責任感のある仕事に取り組めます。
さらに人口減少による人手不足の企業が増加しているため、人材業界のニーズは今後も増え続けるでしょう。
そこで、今回は以下の内容を解説します。
- 人材業界の仕事内容
- 近年の動向と将来性
- 人材業界の魅力と大変さ
10分ほどで読めますので、人材業界に興味がある方はぜひご一読を!
人材業界とは?仕組みを解説
人材業界とは、求人募集を行う企業と求職者をマッチングする、人材会社を指します。
近年の日本では、終身雇用から転職前提の働き方に変わりつつあり、即戦力を求めている企業も増えています。それに伴い、人材業界の需要も今後増加するでしょう。
分類すると、人材業界は以下の4つに大別されます。
業界名 | 内容 | 企業名 |
人材紹介 | 転職サイトを通じて、人材を企業に紹介する | リクルートキャリア、パーソルキャリア(旧インテリジェンス) |
人材派遣 | 派遣社員をクライアント企業に派遣する | リクルートスタッフィング、パソナ |
求人広告 | 人材募集のための広告を販売する | リクルート、エンジャパン |
人事コンサルティング | 人事戦略の課題に対する解決方法を提案する | リンクアンドモチベーション |
このように一口に「人材業界」と言っても、企業によってサービス内容は全く異なります。
そのため就活生の方は、自分が人材業界の中でもどの業界に興味があるのかをよく考えましょう。
人材業界の仕事内容
人材業界の仕事内容は、以下の3つです。
- 営業
- キャリアアドバイザー
- 企画
それぞれ解説します。
営業
人材業界の営業職は、企業に対して人材紹介や人材派遣のメリットを説明し、自社のサービスを提案する仕事です。
メーカーや金融機関、不動産などクライアントの事業ごとに企業のリストを自分で作成し、電話をしてアポイントを取り、受注に繋げます。
1日に数100件の電話をかけることも珍しくなく、他業界と比べても営業の場数をかなり踏めるでしょう。
また人材業界の営業職は、リクルーティングアドバイザー(RA)とも呼ばれており、キャリアアドバイザー(CA)と混同している就活生も多いです。
営業職はキャリアアドバイザーと比べて、求職者と接する機会はかなり少ないため、入社後に「思っていた仕事と違う…」とならないように注意してください。
キャリアアドバイザー
人材業界のキャリアアドバイザー(CA)は、求職者のサポートを行い、最適な企業を紹介する仕事です。
キャリアアドバイザー1人あたり30~50名ほどの求職者を担当して、面談や書類作成、面接対策などを一貫してサポートします。
また人材業界の中でも、求職者の人生を特に左右する仕事のため、やりがいを持って働けるでしょう。
しかしキャリアアドバイザーは、求職者の仕事が終わったあとの夜遅くに面談をしたり、休日に求職者の急なお願いに対応したりするため、業務量や残業は多くなりがちです。
そのため「激務でも責任感の大きい仕事をしたい」という方は、キャリアアドバイザーに挑戦してみましょう。
企画
人材業界の企画職は、自社サービスの向上や企業への紹介数増加のために、様々な施策を企画する仕事です。
例えば、キャリアアドバイザーを必要としない求職者をサポートするために、コールセンターのオペレーションを変更したり、ホームページやマイページの改善をしたりします。
企画職の仕事内容は、営業職やキャリアアドバイザーに比べて難易度が高いため、配属されれば自身の市場価値を高めることができるでしょう。
新卒では基本的に配属されないため、企画職に興味がある方は、まずは営業やキャリアアドバイザーで実績を積み、配属されるように努力しましょう。
人材業界に必要な資格
人材業界で働く上で、必須の資格はありません。
しかし保有していると、仕事を有利に進められる資格が存在するため、国家資格と民間資格に分けて、それぞれ解説します。
【国家資格】
資格名 | 資格内容 |
キャリアコンサルタント | 能力開発やキャリア相談を行えることを証明する資格 |
衛生管理者 | 職場の衛生管理や労働者の健康管理に関する知識を証明する資格 |
社会保険労務士 | 社会保険や労働関係法令などの知識を証明する資格 |
キャリアコンサルタントと似た職種として、キャリアアドバイザーがあります。仕事内容はほとんど変わりませんが、キャリアコンサルタントは国家資格のため、給与面で優遇されることが期待できます。
【民間資格】
資格名 | 資格内容 |
個人情報保護士 | 個人情報の適切な管理と運用ができることを証明する資格 |
メンタルヘルスマネジメント検定 | メンタルヘルスを良好に保つための知識を証明する資格 |
Career Development Adviser | キャリア形成の知識やスキルを証明する資格 |
個人情報保護士は学生でも受験が可能です。さらに学割が適用されて、受験料を安くできるため、余裕がある方は受験することをおすすめします。
人材業界が向いている人の特徴
人材業界が向いている人の特徴は、以下の3つです。
- コミュニケーション能力がある
- メンタルが強い
- 情報収集が得意
人材業界の仕事は、求職者の人生を大きく左右する仕事です。信頼できるキャリアアドバイザーに相談するのが一般的ですので、相手からの信頼を勝ち取れるコミュニケーション能力がある人が向いているでしょう。
また新人の頃は、電話件数や面談数などの目標を達成するために、電話営業やメール送信を繰り返します。しかし断られる場合がほとんどのため、切り替えて次に進めるメンタルの強さが必要です。
さらに人材業界では、さまざまな業界の求職者や顧客企業とコミュニケーションを取ります。それぞれの業界の特性や最新動向などを把握するために、積極的に情報収集する姿勢が求められるでしょう。
人材業界の魅力や就職するメリット
人材業界の魅力や就職するメリットは以下の3つです。
- 求職者の人生の役に立てる
- いろいろな業界を知れる
- 需要が増えている
就職や転職は求職者の人生を大きく左右するため、人材業界の仕事は責任感が非常に大きいです。担当した求職者が、紹介した企業で楽しく働く姿を見られた際には、非常にやりがいを感じられるでしょう。
また人材業界で働くと、さまざまな業界の求職者や顧客企業とコミュニケーションを取れます。仕事を通じて様々な企業について知れるため、転職したり独立したりする際に、知識が役立つでしょう。
さらに近年の日本では、転職前提の働き方が当たり前になりつつあり、即戦力を求めている企業が増えています。それに伴い、人材業界の需要も今後増加することが考えられるため、比較的安定した業界と言えるでしょう。
人材業界の大変さや就職するデメリット
人材業界の大変さや就職するデメリットは、以下の3つです。
- 業務量が多い
- 「人」をビジネスの商材として扱う
- ノルマがきつい
人材業界では、求職者の仕事が終わったあとの夜遅くに面談をしたり、休日に求職者の急なお願いに対応したりするため、業務量や残業は多くなりがちです。ワークライフバランスを重視したい方にとっては、デメリットでしょう。
また人材業界では、「人」がビジネスの商材になるため、罪悪感を感じやすいです。「求職者の人生を一番に考えたいけど、会社の利益を優先しないと…」という葛藤に陥る方も多いでしょう。
さらに人材会社は、営業成績や紹介数のノルマがきついことが多いです。達成できなければ注意されるため、「プレッシャーを感じたくない」という方は向いていない可能性があります。
デメリットはどの業界にも必ず存在します。他の業界と比較した上で、許容できる内容であれば、ぜひ人材業界に挑戦してみましょう。
人材業界の大手企業を3社紹介
人材業界で就活生に人気な大手企業は、以下の3社です。
- リクルート
- パソナ
- リンクアンドモチベーション
それぞれ解説します。
リクルート
リクルートは人材業界最大手企業で、2021年度の売上高は約2.2兆円を誇ります。
そしてリクルートの事業は、以下の3つに大別されます。
事業名 | 事業内容 | サービス例 |
HRテクノロジー | 求人情報サイトの運営 | indeed |
メディア&ソリューション | 住宅や美容、結婚サイトの運営 | SUUMOやホットペッパービューティー、ゼクシィ |
⼈材派遣 | 国内及び国外への人材派遣 | リクルートスタッフィング |
上記から分かるように、リクルートは事業の幅が非常に広いため、興味がある方は入社後に何をしたいかを考えて、選考に臨みましょう。
またリクルートでは、独立や起業をする社員が多いため、社員の成長を促進する制度がたくさん用意されています。
例えば「Ring」という制度は、全従業員を対象にした新規事業提案制度で、審査に通ったプランには予算が与えられます。
実際に2021年度には700件を超える新規事業が起案されており、過去には「スタディサプリ」や「ゼクシィ」などの中核事業が、「Ring」から生み出されました。
このようにリクルートには、若いうちから挑戦できる環境が整っているため、将来に役立つ経験を積みたいと考えている方は、ぜひ挑戦してみましょう。
参考:リクルートホールディングス|有価証券報告書
参考:リクルート|人材マネジメントに関する考え方
パソナ
パソナは人材派遣を中心に、様々なサービスを提供している大手人材会社です。
またパソナは、誰もが自由に好きな仕事を選択でき、働く機会を得られることを目指して、以下のような事業を推進しています。
- 派遣スタッフが在宅で勤務できる「テレワーク派遣」事業
- 教育や研修のオンライン化事業
- 在宅型のコールセンター事業
そして近年パソナが注力しているのが、社会問題の1つである地方創生です。
例えば2020年に、本社の主要機能を兵庫県淡路島に移し、デジタルを活用して淡路島と世界をつなぐことで、雇用の創造を試みています。
人材業界に興味がある方の中でも、特に地方の雇用問題に興味がある方は、ぜひパソナに挑戦してみましょう。
リンクアンドモチベーション
リンクアンドモチベーションは、労働者の「モチベーション」に着目している人事コンサルティング会社です。
モチベーションに着目している理由として、個人でキャリア形成を考える時代において、企業は「⾦銭報酬」に加えて「感情報酬」を提供することが重要と考えているからです。
具体的には組織のモチベーション状態を診断し、採用や育成、風土などの問題に対する解決策をまとめて提供しています。
このようにリンクアンドモチベーションは、終身雇用や年功序列の崩壊という時代の流れを捉え、モチベーションに特化したコンサルティングをしている、人材業界の中でも珍しい企業です。
興味がある方は、ぜひ挑戦してみましょう。
参考:リンクアンドモチベーション|モチベーションエンジニアリング
人材業界の志望動機の書き方
人材業界の志望動機を書く際には、以下の2点を明確にしましょう。
- なぜ人材業界なのか?
- なぜその企業なのか?
まず初めに、人材業界を志望する理由を伝えましょう。その際に、求職者の人生の役に立てるという特徴や少子高齢化などのトレンドを押さえておけば、企業側はプラスに見てくれます。
次に、人材会社が数多くある中で、その企業を志望する理由を伝えましょう。一口に人材会社と言っても、人材紹介や人材派遣、人事コンサルティングなど様々な形態があり、特徴は全く異なります。
それぞれの違いを明確にして、その企業でないとダメな理由を考えましょう。
人材業界の自己PRの書き方
人材業界の自己PRを書く際には、以下の2点を抑えることが重要です。
- どのように企業に貢献できるか?
- 求められる能力を発揮した経験
自分がどのように企業に貢献できるかを書く際には、企業の求める人物像と自分が近いことをアピールしましょう。会社ごとに必ず異なるため、採用サイトや社員訪問を参考にして事前準備を徹底しましょう。
また、人材会社から求められる能力を発揮したエピソードを伝えましょう。職種ごとに求められる能力は以下の通りです。
職種 | 求められる能力 |
営業 | コミュニケーション能力 ストレス耐性 体力 |
キャリアアドバイザー | コミュニケーション能力 学習意欲 ストレス耐性 |
企画 | コミュニケーション能力 想像力 論理的思考力 |
人材業界では、特にコミュニケーション能力が求められるため、学生時代にコミュニケーションで工夫したエピソードを用意すると良いでしょう。
人材業界の年収や給料!ボーナスはいくら?
人材業界の年収と給料を職種別に表にまとめたので、参考にしてください。
職種名 | 年収 | 月収(ボーナス含む) |
営業 | 400万円~700万円 | 33万円〜58万円 |
キャリアアドバイザー | 400万円~800万円 | 33万円〜67万円 |
企画 | 500万円~900万円 | 42万円〜75万円 |
人材業界の平均年収は、他業界に比べて比較的高いといえます。20代で1000万円を稼ぐ人もいるため、若いうちから稼ぎたい人も人材業界に挑戦してみましょう。
人材業界の動向や今後の将来性は?
人材業界の近年の動向は、以下の3つです。
- 働き方の変化
- 生産年齢人口の減少
- 外国人労働者の増加
それぞれ解説します。
働き方の変化
近年の日本では、就活生の4割が「大手も安心できない」と転職を前提として就活をしており、終身雇用が形骸化しつつあります。
この働き方の変化に伴って、「ジョブ型雇用」の企業が人気になっています。
ジョブ型雇用とは、職種や勤務地、時間などの条件が明確に決まっている雇用形態です。従来の総合職と比べて、自身の専門性を高めやすい点が特徴です。
例えば、HITACHIやKDDI、KAGOMEなどの大企業でもジョブ型雇用が始まりました。
このように、終身雇用から転職前提の働き方に変化することで、人材業界の需要も増加し続けているため、非常に将来性がある業界といえるでしょう。
生産年齢人口の減少
近年の日本では、少子高齢化による生産年齢(15~64 歳)人口の減少が問題になっています。
国立社会保障・人口問題研究所によると、生産年齢人口割合は、2015年の 60.8%から減少を続け、2017年には 60%を割り、2065年に 約50%になる見込みです。
また厚生労働省によると、65歳を超えても働きたい人は約70%いますが、65歳を超えて働けるしくみのある企業は約20%しかありません。
このように生産年齢人口が減少する日本において、勤労意欲のある65歳以上の方を企業にどのように紹介するかが、人材業界全体の課題になっています。
人材業界に興味がある方は、志望している企業が中高年層に対してどのように対応しているかを、注目するようにしましょう。
参考:国立社会保障・人口問題研究所|日本の将来推計人口
参考:厚生労働省|高齢者雇用対策の取組について
外国人労働者の増加
日本人の生産年齢(15~64 歳)人口が減少しているため、外国人労働者の採用を行う企業が増加しています。
2021年時点での外国人労働者数は、約170万人で過去最高を更新しており、特に中国や東南アジアからの労働者が多いです。
そのため近年の人材業界では、外国人労働者の採用に特化したサービスを提供している企業も出てきています。
新型コロナウイルスによる入国制限が現在よりも緩和された場合、さらに外国人労働者のニーズが増えることが予想されるため、人材業界に興味がある方は動向に注目しましょう。
人材業界のよくある質問
人材業界に関して、就活生からよくある質問は以下の3つです。
- 激務って本当?
- 罪悪感を感じやすいって本当?
それぞれ解説します。
激務って本当?
人材業界は激務になりがちです。
なぜなら、求職者の仕事が終わったあとの夜遅くに面談をしたり、休日に求職者の急なお願いに対応したりするからです。
しかし企業によっては、働き方改革が進みつつあります。
例えば業界最大手のリクルートでは、「フレキシブル休日」制度が導入されました。
フレキシブル休日の制度は、年間休日(130日)とは別に、年間約15日の休日を自分で追加できる制度で、合計で145日休めるので週休2.8日制を実現しています。実際に2021年3月度前期には、フレキシブル休日の取得率が98%を記録しました。
このように激務になりがちの人材業界ですが、企業ごとに働き方改革が進みつつあります。興味がある方は、志望している企業がどのような取り組みをしているかを調べてみると良いでしょう。
参考:リクルート|福利厚生
罪悪感を感じやすいって本当?
人材業界で働くと、罪悪感を感じる方は一定数います。
なぜなら、人材業界では「人」がビジネスの商材になるからです。
例えば「求職者の人生を一番に考えたいけど、営業の予算を優先しないと…」という葛藤に陥る方が多いです。
しかし企業に利益をもたらすためには、仕事として割り切ることは必要です。
そのため人材業界に興味がある方は、「人」を商材として扱うことを許容できた段階で就活に臨むようにしましょう。
まとめ:人材業界で責任感のある仕事をしよう!
人材業界では「人」をビジネスの商材として扱うため、「求職者の人生を一番に考えたいけど、会社の利益を優先しないと…」という罪悪感を感じやすいです。
また求職者の急な要望にも対応するために、残業が多かったり、休日でも連絡が来たりして、激務になりがちです。
しかし、求職者の人生の役に立てるという、人材業界ならではの醍醐味もあります。
さらに人口減少は今後も続くことが予想され、人手不足の企業が増加しているため、需要が増え続けている業界でもあります。
デメリットをあらかじめ把握した上で働けば、辛いこと以上にやりがいが多い業界でしょう。人の人生を大きく左右する仕事に興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。